『Nocotta』

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【十七.勝ち上がり】

準々決勝第一試合、ぱっしょん部屋は、往来来代が負けたものの、西九条知美、玉緒虎子、小田中光が勝ち、三対一でで準決勝へと勝ち進んだ。

やはり、ダンスで鍛えたバランス感覚は、強力な武器になる。攻められても、そう簡単には土俵を割らない粘り強さを生んでいる。
また、体幹がしっかりしているので、パワーはぱっと見以上にある。ダンサーを侮ってはいけない。

第一試合終了後、ぱっしょん部屋一同は各試合を観戦した。
第二試合も、第一試合と同じぐらいのレベル。

「ま、これぐらいの相手やったら、次は勝てそうやな。」

とは、第一試合では負けてしまった往来来代。みんな表情には自信と余裕がある。

…が、第三試合を見て、一同の顔から自信が消える。

「レベル高い…」

玉緒虎子が呟いた。第三試合、第四試合は、それまでとは一段違うハイレベルな戦いになっていた。少なくとも、決勝まで勝ち進むことができたとすれば、このレベルの相手と戦わなければならない。皆、無口になる。

準々決勝が終わったところで、昼休憩になった。部屋のみんなで昼食を取る。

昼食は、西九条知美の実家で漬けた梅干と棚田恋の実家から送られてきた米で作ったおにぎり、下町真知の自家製味噌を使った味噌汁、あとは細々したもの。

第三、第四試合を観戦し感じた不安も、おいしい食事を楽しく取ることで、ひとまず忘れることができた。

しかし、いざ準決勝第一試合に臨む段になると、また不安が頭をもたげてきた。
そんなチームの沈んだ雰囲気を引きずって、先鋒の西九条知美は、立ち合いで当たり負けし、そのまま土俵を割って負けてしまった。

さらに雰囲気が悪くなる中、往来来代が、気合の入った表情で立ち上がる。

「おっしゃ、今度はやったるで。」

力水で顔をパンパンとはたき、気合いを入れる。

気合十分の往来来代は、立ち合いから突き押しを繰り出して攻めていく。

パシ!パシ!

相手はその迫力に押されて後退していく。
…が、頭の下がった相手に突き押しが空振りし、体が流れたところをすかさず両差しされ、一気に寄られる。
そのまま押し倒されるかとも思われたが、絶妙なバランス感覚と軽やかなステップワークで、下がりながらも倒れない。

そして俵に足がかかったところで、

「おりゃ!」

うっちゃって見事な逆転勝ち。

みんな喜んで駆け寄るが、往来来代は右足を引きずっている。

「あかん、足くじいてもた…」

往来来代は、下町真知に付き添われて医務室へ向かったが、ケガをしてでも勝利をつかみ取った往来来代のがんばりを見て、一同は吹っ切れた。

玉緒虎子、小田中光と気持ちの入った取組で連勝し、ぱっしょん部屋はまた三対一で決勝進出を決めた。

準決勝第二試合は、分かっていたことではあるが、相当レベルの高い試合になっている。でも、もううろたえたりはしない。皆じっと、土俵を見つめている。

大将戦。「八重山部屋」の大将は、個人戦で圧倒的な強さを誇り、無敗で「初代女横綱」の称号を手にした巨豊きょほう

百三十キロ超の巨体はいかなる攻めも受け付けず、太い腕から繰り出される投げ技は、いかなり力士をも一瞬の内に土俵へ転がしてしまう。

大将同士の戦いも、相手の突き押しをものともせず体をつけて左四つになり、そのまま上手捻りで簡単に相手を転がしてしまった。噂にたがわぬ強さだ。

その強さに一番脅威を感じているのは、決勝で対戦する可能性のある棚田恋だった。

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