『キャベツの芯がやわらかくなるまで』

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第7回

夜道を歩いていると、黒いマントを羽織った、ずいぶんと顔色の悪い男が歩いてきた。

「こんばんは。」

挨拶してみた。

「こんばんは。」

返事してくれた。

「こんな夜中におでかけですか?」

「今宵は月がきれいなので、月見の散歩にございます。」

「失礼ながら顔色があまりよろしくないように見えますが…」

「お陰さまで、私は健康であります。顔色が悪いのは、生まれつきです。
なにせわたくし、人間からは『吸血鬼』などと呼ばれる身ですので。」

少し怖い。

「そうでしたか。それは失礼しました。 吸血鬼というからには、やはり、人の血を吸ったりするのですか?」

「ご先祖達の頃には、人の生き血を吸うこともあったようです。
しかし今は、人の血を吸うことは法で禁じられております。
あなた達だって、現代においては、街なかで勝手に野生動物を捕って食べたら罪になるでしょう?
それと同じ事です。」

「そういうものですか。」

「そういうものです。
なので、いきなりあなたの血を吸ったりすることもありません。」

納得。安心。

「ところで、キャベツの芯をいかにしようかと旅をしているところなのです。」

キャベツの芯を見せる。

「ふむ…キャベツの芯ですか…」

吸血鬼、キャベツの芯を手に取り、しばし眺め、吸い付く。

「…水気も少ないし、私としては、吸いようがありませんね。」

そう言って吸血鬼は、コウモリに姿を変えて飛び去った。

妖気の残る夜道を後にした。

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