『イタリアン』
店主 : いらっしゃいませ。
客  : えーと、それじゃこの「シェフおすすめスパゲティ」を。
店主 : はい、少々お待ちを…へい、お待ち。
客  : 早いね。うわ~、細くてビーフンみたいだ~…ってこれ、ビーフンじゃん。
店主 : それが何か?
客  : スパゲティ頼んだんだけど…
店主 : …似たようなもんじゃん。
客  : そういう問題じゃねーだろ!俺はスパゲティ頼んだんだからスパゲティ出せよ!
店主 : はぁ…細かい客はやだねぇ…
客  : 当然のことだろ!
店主 : 腹に入れば皆同じ。
客  : だったらわざわざ食べに来るか!
店主 : まったく、スパゲティ作んのめんどくせーからやなんだよ。
客  : だったらメニューに載せんな!
店主 : 一から麺打たなきゃいけないし。
客  : 前もって打っとけ!別に生パスタでなくても、乾燥パスタでいいよ。
店主 : パスタにはこだわってるから。
客  : そんなハイレベルなとこにこだわんな!もっと基本的なとこにこだわれ!
店主 : ビーフンだったら、具を炒めて麺入れて水入れて、添付されてるソースを絡めるだけだし。
客  : ってそれ、インスタントじゃねーか!もっとちゃんとした料理出せ!
店主 : そんな言い方…ビーフンメーカーに失礼だろ!
客  : それ以前に客に失礼だ!
店主 : そこまで言うんだったらお前が作れよ。今日からこの店は完全セルフサービスだ。
客  : それじゃレストランになんねーだろ!
店主 : うぅ…(涙)、そりゃ、俺だって、最初は燃えてたさ。日本一のイタリアンレストランにしてやるって…
客  : あんたにもそんな時があったんだぁ…
店主 : でも…一度シャレのつもりで、インスタントのビーフン出したら、
客  : それ、シャレになんないと思うけど…
店主 : 常連客に、『腕上げたね』って言われて…
客  : 元々あんたの腕、大したことなかったのね。褒める客も客だけど。
店主 : 以来ずっとインスタントのビーフン出してたら、ある時一人の客に見られて、それ以来だーれも客来なくて。でもパスタ作りだけは、俺の誇りにかけて捨てないと心に誓ったのさ。
客  : まとめると、自業自得だね。まったく、こんな店に入った俺がバカだったよ。(立ち上がる)
店主 : 待てよ、残すのかよ。
客  : だって、何かバカバカしくなってきちゃったし。
店主 : あ、もしもし、食い逃げ犯が現在出口へ逃走中…
客  : 分かったよ、食べりゃいいんだろ。…まったく、食欲なくなっちゃったよ。
店主 : 俺は腹減ったな。
客  : じゃ、あんたも食べる?
店主 : いや、いらない。
客  : 何で?
店主 : インスタント食品嫌いだから。
客  : ふざけんな!